水曜日, 6月 06, 2007

Sonata Arctica: UNIA



ライブ盤を除けば、彼らの5枚目のアルバム。

このバンドは僕が高校生のころにデビューして、それ以来聞きつづけているバンドである。

デビュー当時の作風はいわゆるメロスピというやつで、それ以前からその手の音楽を聴いていた人々にとっては色々と複雑な思いもあったようだが(パクリだとかね)、僕のように彼らの音楽を聴いてからメタルにはまったという人も多いんじゃないかと思う。

でも実は、彼らのアルバムをまともに聴いたのは2枚目までだったりする。

理由は色々あるのだが、3枚目と4枚目はピリッとしなかったというのが最大の問題だった。

個々の楽曲の質、アルバム全体の流れ、この二つが決定的にはじめの2作に比べたら劣っていたと思う。

(3枚目は特に酷くて、いたく失望した記憶がある。)

ただ、個人の音楽の趣味というのは時期によって大きく変わるものだと思うので、いま聴いたらどう感じるかはわからないが、当時はそのように考えていたのである。

結局、その3枚目と4枚目はさっさと売り払ってしまい、「次のアルバムがダメだったら俺はファンをやめる!!」と、固く誓っていたのである。


このような経緯があったから、彼らの新譜が出ると知って、正直複雑な気持ちだったのである。

しかも、発売日はジェフ・ベックのライブ盤とかぶっており、どちらを買うかかなりまよった。

結局、ソナタのアルバムを買って、今回は正解だったと思っている。


今回のアルバムの出来は、前2作の迷いをふっ切るかのような出来である。

彼らは、このアルバムでデビュー以来付きまとっていた「メロスピ」というイメージを完全に捨て去った。

アルバムの中にはアップテンポな曲はひとつたりとも存在していない。

この潔さが、彼らをひとつ上の段階へと引き上げているといえるだろう。

それに代わって、従来から得意としていたミドルテンポでの楽曲の充実と、若干のプログレッシブ寄りへの軌道修正が見られる。

もっとも、プログレッシブなものへの興味は2枚目の頃から見られたものではあるので、彼らからすると正当な進化と言えるのかもしれない。

新しい傾向がいくつも見られるのだが、概ねそれは成功しているんじゃないだろうか。


もちろん、このアルバムが100%素晴らしいアルバムだというつもりはない。


例えば、アルバムの構成。
アルバム全体がミドルテンポの曲で占められているので、どうしても似たような曲が多いというような印象をもってしまう。

「メロスピ」バンドというステレオタイプに苛立ちを感じていたのはよくわかる。

ハードロックバンドがバラードで売れてしまい、世間でのイメージと自分たち本来の楽曲の間で苦悩するというようなもので、よくあるはなしである。

それで曲のメロディーがよく伝わるミドルテンポの曲が多くなったのだろうが、中間の数曲が、曲自体は練られているのに中ダレ気味の印象を抱かせるのもこのあたりに原因があるのだと思う。
(ちなみに、ひとつ付け加えておくと、楽曲がよく練られていることがそのまま良い曲という評価につながる訳ではない。こねくり回しすぎというこも往々にしてある。)


しかし、展開の面での疑問はあるにしても、今回のアルバムは希望の持てるできに仕上っていると思う。

例えば、新機軸の4曲目、9曲目、11曲目あたりは曲として素晴らしいだけではなく、アルバム全体の印象を引き締めるのに一役買っていると思う。
(逆にいえば、これらの楽曲が存在していなければ多分途中で聞くのを投げ出したくなるのではないかと思う。)


もう一つ加えるとすれば、ボーカルのトニー・カッコの歌唱力が飛躍的に向上しているということがあるだろう。

もともとうまい歌い手ではあったのだが、1枚目と聞き比べてみるとその差は歴然である。

表現力と多彩な唄い回しを獲得した彼は本当に素晴らしいと思う。


今回のアルバムは、彼らの成長がはっきりと見られて、正直うれしかった。

勝負は次のアルバムである。

新しい彼らが、どのような成熟をみせてゆくのか期待したい。

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